7日目(6月26日)
この日はアヴァチャ山へのハイキングのプランを予約してあった。言うなれば、今回の旅のハイライトとして、用意してきたキャラバンシューズを履いて、壮大な景観と高山植物を愛でるのだと意気込んでいた。
ベースキャンプに到着して、貰ったビニール合羽を着こんで車から出た。雨と風で合羽がめくれ、真直ぐに歩けない。寒さで手が悴みカメラ操作が危うい。
小一時間程、花ガイドが咲き始めた高山植物を指差して解説するが、花は可愛いのだが、ビニール合羽が耳元で羽ばたき、説明が聴きとれる状況では無い。グループもバラバラになりかけて、収拾がつかないままに退却することになった。
(アヴァチャ山ベースキャンプ)
6輪駆動車はそれぞれ15人ほど乗せて桟橋を出発。舗装道路では普通車並の速度で飛ばし、山道に入れば、左右に揺れながらゆっくりと進んでゆく。
標高800mのアヴァチャ山ベースキャンプまで2時間程かかる。石を避けながら涸れ川を進み、やがて、雪渓に入る。途中のトイレも雪の上で、雉撃つ、花摘む世界だ。
(見たかった晴れた日のアヴァチャ山:写真から)
キャンプの主人は申し訳なさそうに、下山する我々の車の中にまで入ってきて「また来て欲しい」と挨拶し、めいめいにカムチャッカ半島の地図を記念に呉れた。
(地リス)
ベースキャンプの食堂に入り、名物のボルシチで冷えた身体を温めて一息入れた。ズボンもリックもすっかり濡れて、食事の後はストーブの移動して乾かす。
屋外にある簡易トイレへ向かう人以外は、みなこの食堂で屯って暖をとった。食堂の壁には、快晴時の富士山の様な山の写真があったが、現実は鈍色の嵐だけだ。
ペトロパブロフスク・カムチャッキー港の桟橋から山へは2台の6輪駆動車を使う。現地ガイドは昨日と同じ親切なMsアナスタシア、それに、山ガイド、花ガイドも同乗して、錚々たるサポートメンバーが付いた。別の6駆車も同じ陣容だ。備えは万全だが、天候には全く付いていない。
(6輪駆動車で登る)
帰船して展望風呂に入り人心地つき、夕食後は二度目の寄席を楽しみ、爆睡する。その間に、船は錨をあげてペトロパブロフスク・カムチャッキーを出港した。
雪渓を唸りて登る六駆動 一歩ずつ小さき花避け登山靴
空の無いお花畑を撮り歩く お花畑ところどころにリスと人
山小屋の夏ストーブを背で囲む 雪渓を肩に貼り付け活火山